ユースケース図とは
ユースケース図は、UML(Unified Modeling Language)の一種で、システムとそのユーザー(アクター)との関係を視覚的に表現するものです。システムが提供する機能(ユースケース)と、それを利用するアクターの関係を示します。
主な構成要素
- アクター:システムを利用する人や外部システム(楕円の外側に人型や四角で表現)
- ユースケース:システムが提供する機能や振る舞い(楕円で表現)
- 関連:アクターとユースケースを結ぶ線
- システム境界:ユースケースを囲む四角形(システムの範囲を示す)
関係性の種類
- 包含関係(include):あるユースケースが別のユースケースを必ず利用する関係
- 拡張関係(extend):あるユースケースが特定の条件下で別のユースケースによって拡張される関係
- 一般化(generalization):親子関係を表す(継承のような概念)
ユースケース記述とは
ユースケース記述は、ユースケース図に示された各ユースケースの詳細を文書化したものです。ユーザーとシステムのやり取りを具体的に説明します。
基本的な記述項目
- ユースケース名:機能を表す簡潔な名前
- アクター:このユースケースを実行する人や外部システム
- 概要:ユースケースの目的や内容の簡単な説明
- 前提条件:ユースケースを実行するために必要な初期状態
- 事後条件:ユースケース実行後の状態
- 基本フロー:正常系の処理手順(アクターとシステムの対話を順番に記述)
- 代替フロー:例外処理や条件分岐
- 備考:補足情報や注意点
記述例
【ユースケース名】商品を購入する
【アクター】顧客
【概要】顧客がオンラインショップで商品を選択し、決済して購入する
【前提条件】顧客がログイン済みであること
【事後条件】商品が注文され、在庫が減少すること
【基本フロー】
1. 顧客が商品を検索する
2. システムが商品一覧を表示する
3. 顧客が商品を選択する
4. システムが商品詳細を表示する
5. 顧客が商品をカートに追加する
6. 顧客がチェックアウト処理を行う
7. システムが決済画面を表示する
8. 顧客が支払い情報を入力する
9. システムが決済を処理し、注文確認を表示する
【代替フロー】
- 4aでシステムが在庫切れを表示した場合
1. 顧客は商品検索に戻るか、類似商品を選択する
- 8aで支払い情報の検証に失敗した場合
1. システムがエラーメッセージを表示する
2. 顧客が情報を修正して再度入力する
効果的な活用法
- 開発の初期段階で要求を明確化するために使用
- ステークホルダーとの共通理解を形成するためのコミュニケーションツール
- テスト計画の作成に役立つ(各フローがテストケースになる)
- システムの振る舞いを機能単位で把握できる
ユースケース図と記述を組み合わせることで、システムが「何をするのか」を明確に定義でき、技術的な実装より先に「ユーザーにとっての価値」に焦点を当てた分析が可能になります。